ジャンパー膝とは?
ジャンパー膝とは名のごとく、バレーボールやバスケットボールなどでジャンプや着地動作を頻繁に行う競技や、サッカーのキック動作やダッシュなどの走る動作を繰り返したりするスポーツなどにより、膝蓋腱を損傷し、痛みを引き起こす疾患です。
日常的にスポーツを行う10代~30代の若い世代に多く見られる疾患です。
正式名称は「膝蓋靭帯炎」または「大腿四頭筋腱付着部炎」といいます。
原因
スポーツ中において、膝の屈伸運動を頻繁に行うことによって生じます。
ジャンプ、ランニングといった動きを代表に、膝蓋腱の収縮を何度も繰り返し行うことによって損傷して起きます。
体が固い方などで起きやすく、年齢に関わらず体力をつけるために急に走ったり歩いたりすることでも生じますが、充分に休息し膝蓋腱を安静にすることで基本的に完治することがほとんどです。これに対し、スポーツ選手は損傷した膝蓋腱が修復する前に、またを運動してしまい、慢性化して治療が必要になることがあります。
メカニズム
膝蓋腱炎が発症するメカニズムは、膝の伸びる仕組み(大腿四頭筋が引っ張られることで膝蓋骨、膝蓋腱、脛骨粗面にまで牽引力が加わる)に過度な牽引力が繰り返し加わることで、膝蓋骨周辺に微細損傷を引き起こします。
図:ジャンパー膝が発症するメカニズム
ジャンプやダッシュなどによる膝関節の屈伸動作を何度も何度も繰り返すことで膝の伸びる仕組み(大腿四頭筋が引っ張られることで膝蓋骨、膝蓋腱、脛骨粗面にまで牽引力が加わる)に過度な牽引力が繰り返し加わることで、膝蓋骨周辺に微細損傷を引き起こします。
症状
ジャンパー膝は、ダッシュやジャンプするために、踏み込んで膝を深く曲げると膝のお皿の上や下の辺りに痛みが出ます。
また、その部分を押すと痛みがあります。
痛みの部分による分類
ジャンパー膝はBlazina分類で以下のように分類されます。
- 大腿四頭筋の膝蓋骨付着部
- 膝蓋腱の膝蓋骨付着部(※最も多い)
- 膝蓋腱の脛骨粗面付着部
痛みの度合いによる分類
症状 | 運動 | |
stage1 | スポーツ活動後に痛みがあるが、スポーツ活動に支障がない | スポーツ活動を継続する |
stage2 | スポーツ活動開始時や終了後に痛みがあるが、スポーツ活動に支障がない | 無理なスポーツ活動を行わない |
stage3 | スポーツ中にも痛みがあり、スポーツ活動に支障がある | スポーツ活動を休止する |
stage4 | 膝蓋靱帯の断裂 | スポーツ活動を休止し、安静にする |
stage1、2の場合は、スポーツ活動は無理しない範囲以内であれば行いながらでも改善していきます。
診断
簡単にチェックする方法として、膝を伸ばして膝のお皿の下を押したときに痛みがあるかどうかです。痛みを感じて「膝蓋腱炎かも」と思ったら、整形外科・接骨院に診てもらうことをおすすめします。
治療機関の診断方法としては、超音波エコーやMRIといった方法が使用されます。
治療
初期の状態であれば疼痛動作を避けて局所の安静で改善する場合もありますが、大腿四頭筋の柔軟性訓練や体幹筋の筋力訓練は再発予防に必須になります。
リハビリで正しい訓練方法の指導をうけることも重要です。
病院・接骨院での治療法
治療法には保険診療と自費診療の治療があります。
ここでは代表的な治療方法についてご説明します。
保険診療で受ける治療
・超音波治療 (病院・接骨院で治療可)
患部に対する温熱的効果があり、組織の伸展性を高めたり血流改善によって疼痛の緩和を促します。また、組織修復を促すこともできます。
・体外衝撃波療法(拡散型) (病院で治療可)
衝撃波を当てることにより、痛みの伝達を司る神経の一部を除去し、痛みを改善する治療です。
また、この衝撃波療法は血管やコラーゲンを新しく作る手助けもできるため、腱を修復しようとする身体本来の力の活性化も期待できます。
・高周波温熱治療(ラジオ波) (病院・接骨院で治療可)
筋肉や脂肪層まで届くラジオ波と呼ばれる高周波を患部に当てる治療法です。
ラジオ波は体内の水分を振動させて熱を発生させるため、身体の代謝が上がり、筋肉や腱の緊張をほぐす働きがあります。
・ストレッチ、筋力トレーニング、テーピング方法など
プロの指導医から正しいストレッチ法やトレーニングを学べるため、回復までの期間を短縮できるかもしれません。
また、スポーツ復帰にはリハビリは必須なので、しっかり指導を受けることが重要です。
保険適用外診療(自費診療)
・体外衝撃波療法(収束型) (病院で治療可)
衝撃波を患部に当てることで痛みを取り除く効果が期待できる治療です。この衝撃波のエネルギーには痛みの元となる神経を変性させたり、痛みの伝達物質を減少させる効果があります。また、組織修復を促す作用もあると考えられており、膝蓋腱炎の治療では70~80%以上のかなり高い有効性が実証されています。
・PRP治療、PFC-FD療法 (病院で治療可)
PRP治療とは、自身の血液から多血小板血漿*を作製し、そこに含まれる成長因子(組織の修復を促進する物質)を濃縮したものを患部に戻すことで患部組織を正常な状態に戻そうとする、ヒトが本来持つ自己治癒力を活用した治療法です。
リハビリテーション
競技特性やジャンプ、ランニング時の体の使い方、筋力、柔軟性をチェックし、痛みの原因を探します。
痛みの原因に応じて、大腿や下腿のストレッチを行ったり、膝蓋腱への負荷を分散させるために、体幹やお尻周りや足首などの患部外トレーニングも行います。
ステージ1では競技を継続しながら治療を行います。ステージ2では一定の運動量の制限、ステージ3では運動制限が必要になります。
競技復帰までの期間は重症度、スポーツ種目によって大きく異なり、痛みの消失・軽減により徐々に競技復帰していきます。